ヘリコプタースクール選びのポイントや就職率
2018年7月30日
医療機器を装備し、医師や看護師が乗り込むドクターヘリや、山間や海上で威力を発揮する防災ヘリはその数を増やし続けています。その反面、パイロットの免許取得には高額な学費などの問題があり、現役パイロットの高齢化と人手不足に対する不安は深刻なものとなりつつあるのです。
この記事では、ヘリコプターパイロットを目指す人のために、人員需給の現状や、スクール選びのポイント、就職率などについて解説します。
パイロットの需要は高まり続けている
2015年に行われた関係省庁連絡会議では、ヘリコプターパイロット養成の必要性と、人員確保について報告されています。それによると、自衛隊関係者を除いたヘリコプター操縦士の数は、過去15年間においては1000人前後で過不足なく推移していました。また、新規に資格を取得した若年層(20代)のうち、実際にパイロットとして何らかの事業に従事しているのは6割程度とされています。そのためこれまでは人員の供給は満たされていると考えられてきました。
ところが、ヘリコプターパイロット全体でみるとその8割が40代以上となり、今後大量の退職者が見込まれることになるのです。一方、国内全体で人命救助に活躍するドクターヘリや、消火活動などに威力を発揮する防災ヘリは着々とその数を増やしつつあります。さらにヘリを活用しての24時間監視体制の導入・整備が進められるなど、潜在的な需要が高まり続けているのです。
特に10年後、15年後の人員確保が懸念されています。その理由は熟練パイロットの不足にあり、例えばドクターヘリのパイロットには、業界の自主基準ながら2000時間の飛行経験が求められるのです。現状では、ドローンの登場により測量や薬剤の散布といった部分でのパイロットの需要は減少したため、供給量は安定を見せています。しかし皮肉なことに、そのために若手が経験を積むための場が少なくなり、高い技量を持つパイロットの確保は、官民の別なく緊急課題となっているのです。
ヘリコプターパイロットには2種類の免許がある
ヘリコプターパイロットを目指す人の目的は2種類に分けられます。1つはあくまで趣味としてヘリコプターを操縦したい、もう1つは将来の職業としてパイロットの道を目指すというものです。前者の場合は自家用操縦士、後者では事業用操縦士の免許取得を目指すことになります。
自家用操縦士免許は、パイロットの基本的な技術を証明するものです。その利用は、自分自身や家族、友人を乗せての自家用車的な範囲に限られ、報酬を得る目的には使えません。しかし中には、まず自家用操縦士の免許を取り、その後に養成期間を内部に持つ会社や組織への採用試験に挑むという人もいます。また、事業用操縦士を目指す場合にも、まず自家用操縦士の免許を取得しなくてはなりません。
事業用操縦士の免許を持つパイロットの就職先は豊富で、就職率は非常に高いものです。民間企業では新聞社やテレビ局に代表される報道ヘリや、観光のための遊覧ヘリ、重役を目的地へスムーズに移動させるための交通手段としてのヘリなどに需要があります。そして警察や海上保安庁といった官庁関係、各地の病院や消防本部などが持つドクターヘリなど様々です。
いずれにせよ、ヘリコプターのパイロットとなるためには身体検査に合格したうえで自家用でも航空特殊無線技士の資格をとり、40時間に及ぶ飛行訓練を受ける必要があります。事業用の場合はさらに計器飛行証明などの高度な資格や、総計で200時間の訓練を積むことが要求されるのです。そのため、免許の取得にはパイロットスクールに入学するのが近道となります。
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パイロットスクールの授業内容
パイロットになるには、自家用、事業用とも学科試験、口頭試験、実地試験の3つに合格しなくてはなりません。そしてプロの道を目指す人は、自家用操縦士免許に合格した後で事業用操縦士免許を取る必要があるため、合計6回の試験を受けることになります。パイロットスクールではこれらの試験に備えたカリキュラムが用意され、計画に基づいた座学と飛行訓練の授業が行われるのです。その中には海外への留学も含まれます。
日本国内で訓練を完結させるスクールもありますが、多くのスクールでは、自家用操縦士免許の取得を目指す期間中に、アメリカへの留学を組み込んでいるのです。これには、パイロットが航空英語を身に付ける必要があることと、有利な訓練環境が整っていて、費用も抑えられるという理由があります。広大な国土を持つアメリカでは、飛行機やヘリコプターは移動手段として身近な存在です。そのため、飛行場や航空機が数多く揃い貸し出し料金も日本に比べて割安になります。実技試験の試験官の数も多いため、試験日まで待たされることもありません。日本とアメリカは国際民間航空条約(ICAO)の締約国であり、免許に互換性が持たされているというのも大きなポイントです。帰国後は「航空法規」の試験にさえ合格すれば、日本の免許が取得できます。
自家用操縦士免許の場合、訓練全体の流れは次のようなものです。最初に指定機関での航空身体検査を受け、問題が無ければ操縦練習許可書が発行され、飛行訓練を受けることができるようになります。こうして教官同乗での飛行訓練開始となるのです。一方、航空特殊無線技士免許の取得や学科試験対策の座学も受けることになります。その後は単独飛行の訓練に入り、さらにヘリポートや飛行場からの発着へと進んでいくのです。
最後に学科試験と実地試験を受け、合格すれば免許取得となります。個人の技量などによっても異なりますが、全体の訓練期間は半年から1年前後です。
パイロットスクールの費用はどれくらい?
費用がどれだけかかるかは、各スクールや訓練コースにより変わりますが、自家用操縦士免許の場合で300万円程度、事業用操縦士免許の取得には1000万円程度が普通です。この費用の高さが、パイロットを目指す人にとって大きなハードルとなっていることは間違いありません。別の仕事をしながら時間と費用をやりくりする人や、貯金と教育ローンを活用する人など、資金の調達方法は人それぞれです。
一部の航空事業者は入社を希望する人に対し、奨学金制度を設けています。これはあらかじめ行われる、選抜試験に合格した人の授業料を企業が立て替え払いするものです。奨学生は免許取得後、一定期間以上をその企業でパイロットとして勤務することで返済免除となります。
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スクールを選びのチェックポイント
日本国内にも様々なパイロットスクールがありますが、できるだけ自分自身にあったスクールを選び、確実に目指す将来につなげたいものです。そのためのポイントは以下の3つになります。
- 訓練実績
- 環境
- 費用
まずはなんといっても訓練実績です。無事故であることはもちろん、合格率やその後の就職率の高さはしっかりと比較しましょう。次に環境です。国内、海外のどちらにおいても訓練環境が整い、免許取得までのスケジュールに無駄がないのが良いスクールだと言えます。仕事をしながら訓練を受けたい人にとっては、自宅や仕事先から通いやすい位置にスクールがあるかも大切です。
座学については都市部に教室が設けられているほか、インターネットで授業を行っているスクールもあります。最期は費用の問題です。特にローンを組む必要がある場合、低金利な教育ローンが用意されているかは重要なポイントになります。その後の返済計画に無理が出ないよう、事前によく確認しておきましょう。
ポイント押さえたスクール選びで免許取得!
ヘリコプターパイロット全体の高齢化が進む中、各航空事業者や警察、官公庁の航空隊では、世代交代を見越して積極的な採用が行われています。
そのためスクールにも関係者は良く足を運んでおり、訓練中に有望株として認められれば、その時点で就職が内定することもあり、それも就職率の高さとなっているのです。
ポイントを押さえたスクール選びで、確実にステップを踏んで免許を取得し、夢をかなえてください。