アメリカでヘリコプター免許を取得する10ステップ
2018年8月5日

ヘリコプター免許に興味を持っている人は多いものの、費用などの面で断念する人が少なくありません。そういったなかで注目を集めているのが、アメリカでのヘリコプター免許取得です。アメリカで取得すれば、日本の半分程度の費用で済むからです。
この記事では、アメリカでヘリコプターの免許を取得する方法を10ステップに分けて解説していきます。
ステップ1:FAA自家用ライセンス取得への準備
アメリカのヘリコプター(回転翼)の免許は「自家用」と「事業用」に分かれています。「事業用」を目指す場合でも、まずは「FAA」自家用ライセンスを取得する必要があります。FAAとは「Federal Aviation Administration(アメリカ連邦航空局)」の略です。
日本のヘリコプター免許は「JCAB」のライセンスとなります。JCABとは「Japan Civil Aviation Bureau ( 国土交通省航空局)」のことです。FAAのライセンスは、国際協定で各国の免許証に書き換えなどができると定められています。そのため、アメリカでヘリコプター免許を取得して日本の免許に書き換えることが可能になっているのです。
ライセンス取得のためには、まずアメリカで基礎講習を50時間程度受講する必要があります。ここでヘリコプターに関する基礎的な知識を学びます。しかし、これは必ずしもアメリカに行って行う必要はありません。日本国内のフライトスクールで受講することも可能です。
FAAのライセンス取得を前提としたカリキュラムが用意されており、「渡米前準備コース」などの名称で開講されていることが一般的です。
ステップ2:TSA登録/VISA発行
アメリカ国籍以外の人がFAAの訓練を受ける場合は、まず「TSA(Transportation Security Administration)」というアメリカの政府機関に登録することを義務付けられています。FAAの「固定翼ライセンス」を既に持っている場合は登録不要です。登録の手続きをしてから許可が下りるまでは5営業日程度はみておく必要があります。スケジュールには十分に注意しておきましょう。
TSA登録はインターネットで行うことができます。TSAからは返信のメールがもらえるので、その指示に従って手続きを進めます。登録料はクレジットカードで支払います。必ず自分の名前が記載されたクレジットカードが必要なため、姓の変更などがある場合には注意が必要です。
なお、TSAの正式登録には指紋の提出が必要になりますが、これは渡米後で間に合います。渡米の前に、VISAを発行しておくことも忘れてはいけません。
ステップ3:飛行訓練
なお、単独飛行に必要なFAA訓練生操縦士資格(FAAスチューデントパイロット)は、年齢が16歳以上ですが、FAA実技試験申請は17歳以上となっています。16歳の場合は実技試験の申請ができないので注意が必要です。
ステップ4:座学講習
飛行訓練と並行して座学講習も受講します。講習時間は合計50時間程度は珍しくないため、それなりの集中力が求められます。ヘリコプターのPOHや法律などを学習します。
また、航空力学や重量とバランスの計算、飛行計画などを学んでいきます。最低限の英語力は必要ですが、英語が苦手という人でも十分に理解できる内容です。
ステップ5:FAA学科試験・FAA航空身体検査
FAAのライセンスを取得するためには、実地試験の前にFAA学科試験を受験し、合格する必要があります。一度筆記試験を合格すれば、合格した日から24ヶ月間有効となります。
また、筆記試験の合格だけでなく、FAA航空身体検査証明(FAAメディカルライセンス)も必要になります。この身体検査の証明も24ヶ月間有効です。ただし、診察を受けた日の時点で40歳未満であった場合は、証明が60ヶ月間有効となります。
ステップ6:FAA自家用ライセンス実地試験
最後の実地試験をクリアすれば、FAA自家用ライセンス取得となります。試験に必要な総飛行経験は40時間以上と規定されています。ヘリコプターの同乗教育は20時間以上の経験が必要です。また、「野外飛行は3時間以上」、「夜間飛行も3時間以上」です。さらに「夜間野外飛行1回以上」、「夜間離着陸10回以上」が必要です。
「単独夜間飛行の経験」も必要で、経験は「10時間以上」です。その内容についても細かい規定があり、「野外飛行3時間以上」、「2回以上の生地着陸を含む野外飛行」、「管制塔のある空港での離着陸経験3回以上」と定められています。
FAA自家用ライセンスを無事に取得した後は、JCABに書き換えることが可能です。しかし、FAAにはない条件があるので注意が必要です。野外飛行は5時間以上であることに加え、オートローテーションによる着陸経験が求められます。
ステップ7:FAA事業用ライセンスに向けて
FAA事業用ライセンスを受験するためには、FAA自家用ライセンスを取得していることが条件となります。事業用ライセンスを取得すれば、単なる趣味ではなく「プロフェッショナル」として業務に従事することが可能になります。
プロフェッショナルパイロットの活躍の場はさまざまです。観光フライトだけでなく、報道や空撮、農薬の散布など業務範囲は多岐にわたります。もちろん、警察・消防などもプロフェッショナルパイロットが必要とされる分野です。FAA事業用ライセンスの取得に向けて、再度VISA取得など渡米の準備を進めます。
ステップ8:飛行訓練
渡米したら、再度飛行訓練に励みます。ここでも飛行訓練の時間はスクールによって違いますが、FAA事業用ライセンスの受験資格を満たす時間と、スキルの向上に必要な時間の訓練を行います。
事業用ライセンスの実地試験に必要な飛行経験は、自家用ライセンスに比べてはるかに多くなります。150時間以上の総飛行経験が必要であるだけでなく、そのうち最低100時間以上の機長時間経験が求められます。
ステップ9:FAA事業用ライセンス学科試験
飛行訓練と並行してFAA事業用ライセンス学科試験のための座学講習を行います。この場合も講習時間はスクールによって違いがありますが、おおむね30時間の講習は覚悟しておくことが必要です。
試験内容は自家用ライセンスよりも高度なものになりますが、自家用ライセンスの勉強で感覚をつかんでしまえば決して難解なものではありません。なお、FAA固定翼パイロットライセンスの所持者は筆記テストが免除されます。
ステップ10:FAA事業用ライセンス実地試験
FAA事業用筆記試験を通過すると、いよいよFAA事業用ライセンス実地試験となります。口頭試験もあります。ここでもFAA航空身体検査証明が必要となりますが、有効期限以内であればもちろん以前のものが使用できます。受験資格となる飛行経験については時間数だけでなく細かい内容も規定されているため、あらためて確認することが大切です。
機長経験には「最低10時間の野外飛行経験」という項目があります。また、最低20時間の同乗教育のなかには「最低10時間の計器飛行訓練」という項目もあります。また、「3回以上の生地着陸を含む野外飛行」などもあり、うっかり見落としがないように注意しておく必要があります。
無事に口頭試験と実地試験を通過すると、晴れてFAA事業用ライセンスを取得することができます。JCABに書き換える場合は、実施試験は免除されますが、法規の学科試験があることに注意が必要です。しっかりと日本の法規を学習しておくことが求められます。なお、書き換え手続きの際にはFAAライセンスのコピーが必要となりますが、手元に届くのは実技試験合格からおよそ120日以内です。余裕を持った計画を立てておく必要があります。
アメリカでのヘリコプター免許取得は難しくない
このように、アメリカでのヘリコプター免許取得は、きちんとステップを踏めば決して難しいものではありません。なにより、日本の半額以下の予算で免許を取得できるというのは大きなメリットです。また、アメリカでさまざまな体験をできることも魅力のひとつです。
ヘリコプターの免許取得を検討しているのであれば、ぜひアメリカでの免許取得にチャレンジしてみましょう。